平岩幹男『自閉症スペクトラム障害』(岩波新書,2012年)

社会生活上の困難をなるべく減らす
どのような困難を抱えているのかを理解し,適切な支援をすることが必要
自閉症の三つ組
? 社会的相互作用の質的な障害
1 社会性の障害
2 人とかかわることが苦手
3 急な変更に対応できない
4 社会の一員であるという認識が困難


? コミュニケーションの質的な障害
1 言語的コミュニケーション
2 非言語的コミュニケーション
A 表情や声を理解する
B 視線を合わせる身振りや手振りを理解する

? 限定された興味や活動(こだわり,想像力の障害)
想像力の障害
ここはどんな場所か 静かにしている場所?騒いでいい場所?
相手がどう感じているか わからないため自己主張が強いと思われる
見ればわかるだろう わからないから指示が必要
「裏」ルール 「相場」がわからない

こだわり


大切なことは,こうした症状はそれを解決するヒントをいつも含んでいる
そのためのトレーニングを考える

社会生活訓練(SST

発達協調性運動障害
同時に動かす協調運動は苦手 手足の動きのぎこちなさ

セルフ・エスティーム
自尊感情,自己肯定感,「自分を大切だと思える」 自信を持って生活できる

発達障害 「できないことがある」
発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションの障害で,
現在では根本的な治療はないけれども,適切な対応をすることによって,
社会生活上の困難は軽減される障害

「困難の軽減」 少しずつ段階を経て減らしていくことができる

ADHD
不注意型 忘れ物が多い,集中を持続することが困難
多動・衝動型 ルールを守れない,飛び出す,割り込む,じっとしていられない

環境調整

言葉を話せなくても療育がある

療育の目的は,子どもが社会に適応できるようにすること

社会生活を送るうえで習得すべきスキル
学業的スキル
社会的スキル
身体的スキル

自分だけの主導権の世界から,他者と主導権のやりとりをするコミュニケーション能力を
育てていかなければなりません。

脳の防火壁を壊して刺激を入れる

ABA(応用行動分析)
「指示する」→「実行する」→「ほめる」
指示がわかりやすく,単純な内容であることが必要
出した指示が実行できないという状況を減らすことを考える
できないことは手伝ってでもできるようにする
「できること」を指示しているか

目線の高さ,アイレベルを同じにする

子どもが「ほめられたことがわかる」という状況を作り出すことが療育には欠かせない
相手にわかるようにほめることが欠かせない

ほめるときのコツは,自分がうれしいという気持ちを心から表現すること

指示を出すことも,ほめることも,細かくすること スモールステップ化
可能な限り段階を細かく分けて,できるようにすることを考える
失敗を少なくすること

「禁止語」(ダメ,やめて)「命令語」(座りなさい,食べなさい)をなるべく使わない
「感情をこめないで」冷静に叱る

家庭での療育 「あせらない」「あきらめない」「がんばらない」

「できるようになる」と信じて取り組むことで,「できるようになる」可能性は高くなる
子どもの状況が改善すると信じて行動することはとても大切だ

ABAの三要素
?強化子(ほめること)による訓練
?プロンプトによる促進 失敗させないために手伝ってでも成功させる
?般化(はんか)による社会適応 他の人とでも実行できる

なるべく細分化し,スモールステップ化する

SST(社会生活訓練) 日常生活習慣を確立する 対人関係を含む日常生活を円滑に
送ることができるようにする
社会生活訓練(SST
落ち着かせる 気持ちを安定させる
ほめる
なるべく失敗させない
自分で説明させる(質問に答える)
叱ってもよいが怒ってはいけない
なるべく「怒らない」
感情的に「怒る」のではなく冷静に「叱る」

うまくできたらほめる,できることをスモースステップで行う

ほめることは蓄積する
ほめるためのポイントは,できて当たり前だと考えないこと
「気軽に」「繰り返し」ほめる

質問に答える練習 会話は,質問にお互いに答えることによって継続される
エス・ノー型の質問 「朝ごはん,パン食べた?」
選択肢のある質問 「朝ごはん,パン食べた,ごはん食べた?」
自由に答えられる質問 「朝ごはん,なに食べた?」
質問に答える能力を育てていく
苦手なことは,ほめながら練習する,そしてうまくいった経験を積む

指示は具体的に 具体的に伝える
理解できたら復唱させる

問題行動の多くには原因がある。問題行動をよく観察する

多くの問題行動は解決可能
なぜそれが起きているか
どうすれば「ほめる」ことができるか
どうすれば「叱らない」ですむか

問題行動を消すためには,
「ほめながら」「スモールステップ」で「失敗させない」ようにする

理解できない行動,困った行動に対して
落ち着かせる
簡単な質問を繰り返しながら,自分で説明させる
それができたら「ほめる」
命令語と禁止語に気をつける 希望形「説明できたらうれしいな」で聞く
禁止語を使わざるを得ないときは「ね」をつける

すべきことをリストにして,できたらほめる
できなくても「明日は・・・もできたらいいね」と話す

「まあいいか」と言う練習
勝ち負けにこだわったり,黒白はっきりしないときがすまない 妥協が苦手

独り言は「やめなさい」と言って「切る」のではなく,独り言に反応して会話の練習に
誘い込みます。すなわち「拾う」

世の中はイエスよりもノーが大切
世の中で生きていくためには「ノー」が言えることも大切
ノーを言う練習
ノーを言わなければいけない場面を学習する
いきなりノーと言ったら相手が傷つくかもしれません。どのようにノーを言うのか
「すみませんが」「失礼ですが」「ごめんなさい,でも・・・」などの表現を練習する

ASDを抱えた子ども」
障害はその個人の一部にすぎない

告知と受容
「自分はどこか違う」と感じ始めたときに,説明を聞いて理解できる時期に行う。
告知すれば「そうだったのか」と理解してセルフ・エスティームがあがるだろうという状況
タイミングで行う

最終目標
1 自分に自信の持てる状況,すなわちセルフ・エスティームの高い状況にする。
そのためには,できないことを少しずつできるようにする努力や取り組み
そして,「ほめられること」が必要です
2 社会で生きていけるようにする
社会生活上の困難があれば対応すべき
個性というのは社会生活に困難を来さず,その枠組みの中で生かされていくもの