佐藤卓己言論統制 増補版』(中公新書2024年) 

552ページ、分厚い。読み切れるかと不安だったが、 

むしろ、読み終わるのが残念なくらい味わいながら読み進められた。 

「鈴木日記」を中心に、その内容を史料で実証しているので、 

鈴木庫三言論統制について説明しているような臨場感がある。 

言論弾圧ではなく言論統制であったことが、見事に実証されている。 

丸山真男ですらまちがえる、巷間流布している誤謬に満ちた多数説の怖さを感じる。 

自らの戒めとして、物事を判断していきたい。 

 

佐藤卓己言論統制 増補版』(中公新書2024年) 

戦前と戦後の連続性を強く感じる。 

断絶ではなく連続こそ、戦後日本の核心であった。 

政治はもちろん、出版業界も大学も美術も文学も戦前に活躍した人が戦後も活躍している。 

戦争が逸脱ではなく、ひとつながりの歴史としてとらえる視点が大切だと感じた。 

戦争を美化し、大東亜共栄圏を理想と描いていた人が戦後も追放されることなく要職にある。 

積極的に戦争画家として協力した人が戦争犯罪を糾弾する側に立場を変え、戦後もその立場を維持する。 

鈴木庫三はこのような人々の責任を転嫁する対象として利用された。 

原武史『戦後政治と温泉』(中央公論新社、2024年) 

戦後政治史における空間政治学 

東京から離れて箱根や熱海で時間を過ごす首相 

が作り出す、政治空間。 

吉田茂鳩山一郎石橋湛山岸信介池田勇人佐藤栄作 

でも、それぞれの政治家の空間の利用方法は多様である。 

元老として、奥の院に鎮座した吉田茂 

アンチ吉田としてより開かれた姿勢を見せようとした鳩山一郎 

かみしもを脱いだ交流の場としても考えた岸信介 

公と私を厳格に区分し、国際会議を開催するが、私空間には立ち入らせない池田勇人 

一次資料を縦横無尽に狩猟し、実証的に分析している 

温泉という空間で個人に与えた影響が、さまざまな政治的反響を生み出していく 

空間の政治学 

私も『原敬日記』を読みながら、東京から離れて、腰越(鎌倉)や岩手 

に足しげく通う原敬の姿を興味深く観察していた。 

東京という俗世間から離れて自らを再活性化させ、客観的な視点を付与しうる 

地理的な距離がもたらす影響力。 

原敬は鉄道に乗ることでも、自らの意識を再活性化していたのではないか。 

相当の時間鉄道に乗っていたと思う。 

東京から遠くは離れるという距離の感覚が、意識を再活性化し、 

三谷太一郎の言う、ザッヘへの思いをより強めることになったのではないか。 

是非、原武史の『原敬と鉄道』を次回作としてお願いしたい。 

北朝鮮入門

礒﨑敦仁、澤田克己『最新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社、2024年)

  2017版を最近読んだが、内容がアップデートされていて、整理されているので理解が深まる。

ミサイル技術を高度化していること

射程距離、燃料、発射台。ロフテッド軌道。移動式の固体燃料。まるで米ソ対立の核軍拡の高度化のように。

韓国やアメリカと友好と対立を繰り返していること。

公開情報を綿密かつ批判的に検証することが大切なこと。礒﨑敦仁さんのフォーサイトの連載のように。懐かしい感じがするのはソ連時代を彷彿とさせるからなのでしょう。

 

埼玉大学夜間主コース

埼玉大学経済学部夜間主コース

私が在学した2002年頃とはかなり違っていると思います。

でも、いい先生が多数いるのは間違いなく、経済学部だけではなく、教養学部教育学部の講義も受講できます。

経済学部の昼の講義はもちろんです。

政治学や政治史の先生も在籍していましたし、非常勤講師の講義も興味深いものでした。

北朝鮮現代史

和田春樹『北朝鮮現代史』(岩波新書、2012年)

私が調べたことのみが現代史の事実です。

歴史を記述できるのは私だけです。

との意気込みと能力を実感させる充実した新書。

入門書ながら本格的です。

和田ワールドヘ

北朝鮮現代史 (岩波新書)

ようこそ。