552ページ、分厚い。読み切れるかと不安だったが、
むしろ、読み終わるのが残念なくらい味わいながら読み進められた。
「鈴木日記」を中心に、その内容を史料で実証しているので、
言論弾圧ではなく言論統制であったことが、見事に実証されている。
丸山真男ですらまちがえる、巷間流布している誤謬に満ちた多数説の怖さを感じる。
自らの戒めとして、物事を判断していきたい。
戦前と戦後の連続性を強く感じる。
断絶ではなく連続こそ、戦後日本の核心であった。
政治はもちろん、出版業界も大学も美術も文学も戦前に活躍した人が戦後も活躍している。
戦争が逸脱ではなく、ひとつながりの歴史としてとらえる視点が大切だと感じた。
戦争を美化し、大東亜共栄圏を理想と描いていた人が戦後も追放されることなく要職にある。
積極的に戦争画家として協力した人が戦争犯罪を糾弾する側に立場を変え、戦後もその立場を維持する。
鈴木庫三はこのような人々の責任を転嫁する対象として利用された。