草柳和之『ドメスティック。バイオレンス』(2004年,岩波ブックレット)
DV克服の枠組み
①あらゆる暴力的行為をなくす。
②被害者に与えてきた苦しみに対して責任を取る。
加害者はこのような被害者からの怒りを受けとめ,その責任追及に最大限の誠意をもって応えなければならない。加害者は被害者の痛みを感じ取る力を取り戻し,責任性からの逃避の姿勢をもたず,その時点で何が本質的に求められているかを見いだし,ぎりぎりの自己表現をしていかなければならない。
加害者は,相手に努力や協力を要求できる対等性をキャンセルする必要がある。
DV克服のプロセスでは,自己防衛に陥る人間の弱さを見つめつつ,拭えないほどの苦痛を与えた人間の真の誠意とは何か,贖罪とはいかなることか,加害者から率先した公正さの実現はいかにして可能か,など極めて深い実存的問いかけを避けて通れないのである。
怒りを暴力につなげているのは自分なのである。
暴力のある男性には,不満足を覚える事態に対する適切なスキルがかけている。怒りを抑えることによって,DV克服を実現するのは不可能である。
(つづく)