政治

佐々木毅さんの本を読んでいて、最近、彼がなぜ政治思想の世界に傾斜しているのかがわかった気が
した((そもそも彼の専攻は政治思想であるが。東京大学法学部の助手論文は『マキャべりの政治思
想』))。
佐々木さんは、衆議院議員総選挙への小選挙区制の導入を柱とする選挙制度の改革に民間政治臨調な
どを舞台として積極的にかかわった方である。しかし、小選挙区制は現在のところ政権交代を実現す
るという所期の目的を達成していない。佐々木さんは1980年代に政権交代のために衆議院議員選挙へ
比例代表制導入を提唱していた(『保守化と政治的意味空間』)。しかし、自説を変えて小選挙区
制導入の運動を行ない制度改革を現実化したにもかかわらず政権交代を実現することが出来なかった
。自らの行為の反省と、その結果として現実政治への関心を低下させたのではないか。
同じように、比例代表制を唱えた経験を持ちながら、小選挙区制度の導入に奔走した山口二郎さんは
政権交代を実現できなかった結果責任自己批判した。結果責任を引き受ける姿勢は政治家そのもの
である。
丸山真男は安保以降は政治的発言を極端に減少させている。そして政治思想史の研究に没入していた
印象がある。佐々木さんとの共通性がある。
佐々木さんは小選挙区制の導入に奔走したが政権交代を実現することが出来なかった。結果責任をと
るという政治のルールに反し自己批判を怠った佐々木さんは、現実政治の現場から退却を余儀なくさ
れた。一方、結果に責任を持つという政治のルールにのっとって、結果責任自己批判した山口さん
は政治の舞台への再登場が可能であった。
小選挙区制度の失敗により現実政治からの退却を余儀なくされた佐々木さんは「政治とは何か」との
思索を深化させるために政治思想の世界に戻ったのだと思う。それが彼の結果責任の取り方である。