埼玉大学「もぐり」学生の日記

昨日は「政治・経済とメディア」でした。
担当は毎日新聞政治部副部長の古賀攻先生です。官邸のキャップや外務省を担当されていたそうです。今は政治部のデスクで,記者の書いた記事の「最初の読者」として事実誤認や論理のゆがみを修正し,記事を出稿しているそうです。
昨日の毎日新聞の1面に先生が自ら書いた「村山談話と認識を共有」という記事について,「なぜ1面か」についての解説。小泉首相が中国問題を決着させるカードとして,村山談話をもちだしたという推定にもとづいた記事である。靖国問題は,まず日本国内の問題であり,昭和天皇の戦争責任という問題を回避できない。しかし,そうなると国内が混乱するので,靖国問題にはふれられない。
(その日の新聞記事について,それを書いた記者から,書いた理由を説明してもらえるなんてとても貴重な経験をさせてもらいました)

外交とは隣近所とのお付き合いの仕方である。
小泉時代になって官房副長官補を中心とした官邸主導で外交が進められた。
利害対立を調整することが政治の機能のひとつである。
アメリカとの関係が一番で,それを損ねない範囲での国連中心主義。
80年代までは,実態として現在と同様の日米軍事同盟であったにもかかわらず,「同盟」というと言葉自体がタブーであった(鈴木内閣での外務大臣の辞任)
冷戦崩壊以降の政治的軍事的不安定に対する日米のコミットが99年の周辺事態法以降の日米同盟の深化につながる。
日米同盟は深化し,90年代以降,質的に変化している。
「世界の中の日米同盟」(外務省はこういう)
中心には日米安保があり,それに対する国内法的対応が周辺事態法と有事法制(武力攻撃事態法)であり,その外側に01年11月のテロ特措法(外務省の人はガソリンスタンドという),03年8月のイラク特措法がある。これらの特措法は国連安保理決議に基づき日本が行動する根拠となるもの。しかし,実はアメリカのための立法であり,行動を正当化するための法律上の解釈と動機にねじれがある。
また,日米安保と特措法では,対象が地理的に違う。
このような大きな同盟の変化も「そうかなと思わせる」国際情勢の変化がある。
個々人によって評価は異なるであろうが,20年,30年後に小泉さんの実績とされているのは,郵政民営化ではなく,この日米同盟の深化ではないか。
(私は以前からアメリカ従属的な外交を嫌っていたので,事実関係をあまりフォローしていませんでした。同盟の深化に賛成しているわけではありませんが,今日の講義を聞いて頭の中がすっきり整理された気がします。)

古賀先生は明晰な方で,これからの講義が楽しみです。
昨日は仕事の関係で睡眠時間が短かったのですが,無理して行った甲斐がありました。