武川正吾,2004,「福祉国家と個人化」『社会学評論』54(4)

福祉国家の価値は連帯と承認
資本制は労働力を擬似商品として扱う→「商品化の無理」→労働力の脱商品化
家族の個人化
職域の個人化
地域の個人化→個人の自立→個人単位で組織
地縁に依拠した同質性ではなく,目的や利害の異質性を前提としなければならなくなる→ローカルな水準において市民社会が誕生する
地域からの個人の離脱は,個人の自立を促す一方で,新たな社会的排除を生む可能性もある
社会的排除も個人化⇔新しい型の社会的包摂
消費の個人化=個人の行為様式の変化
生産の柔軟性の確立
情報化=消費化の結果,質料ではなく情報による付加価値の増殖が可能となり,人びとは,他から差別化された商品を求めるようになる
公共部門の硬直性に対する消費者からの不満
個人は集団の抑圧を逃れて自立するが,他方で,集団の保護を喪って社会的排除をこうむる
核家族単位=世帯単位の原則を採用しながら家父長制を再生産するという意味で,福祉国家ジェンダー化されていた
個人化は「ジェンダー化された福祉国家」の脱ジェンダー化を求める
個人化の趨勢を所与とするならば,福祉国家の社会政策はジェンダー中立的なものとなっていかざるをえない
地域の個人化にともない社会的排除も個人化する
家族や地域を前提に設計されていた対人社会サービスでは適切に扱うことが困難な問題群が目立つようになってきている(ひきこもり,暴力,虐待,路上生活,孤独死等々)
「ソーシャル・インクルージョン
地縁から離脱した諸個人は,地縁とは異なり,自発性を基礎に結合する
地域における個人化の進展は,日本の地域が,異者が対等な立場で向き合う市民社会へと変化しつつあることを意味する
両者が相互に対等であることを認めたうえでの政府と非政府による地域社会の共同統治(地方ガバナンス)が確立されなければならない
社会政策における民営化の背景には,消費生活の個人化によって生まれた,柔軟な消費への欲求がある



「個人化」をキーワードに「向かうべき方向と,向かうべきでない方向」をシンプルに整理したいい論文でした。
これだけわかりやすく書いてあると,私たちの生活実感にマッチしているので,フレーズを演説に使っても違和感がないと思います。