政治について

1 政治とは

政治的選択とは,「悪さ加減」の選択*1であり,より悪くないものを選択することが,政治的選択なのである。
なぜならば,政治とは理想と現実との乖離を埋める永久運動だからである。
現実の社会をよりよいものに変えていくことが政治の役割なのだ。
しかし,政治を,善と悪との二項対立と考え,物事を単純化していると思う。
例えば「こんなことをしていると政治不信が高まる。」と理想と現実との乖離のみを問題視して,現実の政治を断罪しようとする論調である。
政治は利害の調整であり,それぞれの個人や党派が,自らが,社会にとって利益となると考えることを主張し,その優劣を競うのだ。したがって,与党となった個人や党派が,自らの利益と考えること*2を行うのは当然である。
有権者の役割はその是非を判断することなのである。有権者には積極的に選び取ることが求められているのだ。
その選択を棄権というかたちで放棄して,政府与党の行動を批判しても説得力に欠ける。
与党も野党もいまひとつだけれども,どちらかを選び取る選択が必要なのである。

2 現在の政治について

今行われている新自由主義的な諸施策は,貧富の差の拡大というかたちで,社会における階層化を加速する。*3
私たちの生活における安心を保障するという政府の役割をないがしろにしているのだ。
しかし、これもまた私たちの政治的選択の結果である。政府与党の人々が、自らの支持者の利害を代弁するのは当然なのである。
したがって、このような閉塞を打ち破っていくためには、私たちの政治的選択が求められている。
それは「あれもだめ、これもだめ」ではなく、「よりよいもの」、「悪さ加減の少ないもの」を選び取るという政治的選択である。

3 あきらめないで変えていくには

「国が変わらなければ、政治や社会は変えられない。」という考えは、従来、左右両派に共通した観念であった。それは上からの「国家統治」の考え方である。しかし、現在は地方分権の歴史的趨勢の中で「市民自治」という考えが現実的な影響力を持ちはじめている。すなわち、地域で、自治体で政治や社会を変えていく運動である。*4
ここにあきらめないで政治を変えていく可能性があるのだ。

*1:福沢諭吉

*2:新自由主義的な諸施策

*3:それは教育における階層化をうみだし、格差を再生産していく

*4:松下圭一『日本の自治と分権』岩波書店,1996年